前回のあらすじ
社内のレース未経験、入社3年以内の若手社員で耐久レースに出場しているプロジェクト「ヤングレーシング」
出場しているのは「ミニろく」の名前で知られる、富士スピードウェイを中心に開催されているミニバイクの耐久レースです。
第4戦の富士カートコースでは、スタート後の1コーナーで転倒したライダーを避けて空中半回転捻り背中着地をキメたり、コケたり、コケたり、コケたりと散々なレース結果となりました。
ただ、新メンバーとして加入した新卒社員が4回の転倒にもめげずにフィニッシュライダーを務め上げたりと、チームとしては得るものの多いレースでした。
僕らだけでやるんですか…?
いつもはレースの大体2~3週間前から準備で慌ただしくなり始めるのですが、今回は少し違いました。
第4戦終了後、第5戦は富士本コース(国際コース)でのレースということもあり、楽しみだなあと呑気に考えていたのですが、レースの開催日程を見てあることに気づきます。
「テイストオブ筑波と丸かぶりしている!!!」
そうなのです。ヤングレーシングとはレース未経験の社員で構成されているチームですが、さすがに初心者集団ではマトモにレースが出来ないので、レース経験のある諸先輩方にサポートされていました。
つまるところ、その諸先輩方は自らの主戦場であるテイストオブ筑波に出場・サポートに行ってしまうため、筆者たち若手のみでレースに出なければいけないのです。
「独り立ちするには早い…早くない……?」と猛烈に不安になりながらも、腹を決めて準備を始めます。
それでもレース本番はやってくる
先輩たちが居ない分、てんわやんわで準備をしつつレース当日。
人手が足りないことが予想されたので、メンバー勧誘のために右往左往しつつの準備はなかなかハードでした。
今回の参戦メンバーはこちら。
第1戦から続投している2年目社員筆者、ホリウチ、オジーに加えて、前戦デビューの小竜、更に新メンバーのO氏、Y氏を加えて6人がライダー。
更にミニろくで優勝経験のある先輩が監督としてサポートに来てくれました。
今回は新メンバーもそうですが、先輩がサポートに来てくれたお陰でレースを走り切れた面もあるので、感謝しかありません。
今回のコースは国際コースだヨ!
第5戦のコースは富士の本コース。国際コースですよ国際コース!
F1開催の実績もあるレーシングコースで、テレビかゲームの中でしか縁の無いコースです。
ホームストレートの長さは約1.5km。世界で見てもトップクラスのストレートの長さです。
ピットボックスごとにトイレが完備してあり、用を足しながら「ここに名だたるレーシングドライバーが座ったのか…」と尻を通してレーシングスピリットに思いを馳せていました。
用を足した後は、なんだかドライビングスキルが向上したような気もしてしまいました。
スタートライダーという経験
耐久レースの面白さ、というか他で経験出来ない感覚は、スタートライダーとフィニッシュライダーに詰まっていると思います。
これから6時間を走りきらなければいけないなかで、最も混乱やアクシデントの起きるスタートを乗り切り後に繋いでいくスタートライダー。
全員で繋いできた6時間の努力をフィニッシュラインまで確実に届けらなければいけないフィニッシュライダー。
どちらも耐久レース以外では経験出来ない貴重な体験なので、ヤングレーシングではこの2つを持ち回り制にしています。
今回のスタートライダーは小竜くん。
大体スタート前は、スタートライダーの緊張をよそに他のライダーはリラックスしているという構図になりがち。
どうやって自分のタスクに集中するか、どうやって切り替えて行くかなど、スタートライダーをやらないと分からない感覚を学べます。
レーススタート!
そして緊張のスタート。
今回はスタート時にピットウォール近くに居られなかったため、スタート時の写真は無し。
スタートライダーの小竜くんは盛大にエンストをカマし、60位程順位を落とす順調なスタートを決めました。
ただ、その後は終始安定したラップを刻み、前回コケまくった富士カートコース戦から明らかに進化していました。
今回のライダーの中で唯一、50分のフルスティントをこなして無事帰還。これからの走りにも期待です。
第二ライダー、コケる
第2ライダーは同期のO氏。実は昨年一緒にレン耐という、レンタルバイクで参加する耐久レースに一度出場した経験アリ。
タイムも順調に上がり、今回のレースは安定して周回を重ねれば意外と上位にいけるのでは?と思っていたその矢先。
そうです。転倒です。
O氏いわく「もう一個コーナーがあった」といった意味不明な供述をしており…
要はコースに慣れてペースが上がってきた場面で、複合コーナーを曲がり切れずにオーバーラン、そして転倒したとのこと。
ただダメージはそこまで重くなく、折れたレバーを交換し、ひん曲がったシフトペダルを監督と自分で板金して修理完了です。
第三ライダー、コケる
第三ライダーは今回がデビュー戦のYくん。
スタート後はめちゃくちゃペースも良く、タイムも上々でした。初心者ながらフォームもキマっており、自分のデビュー戦で撮られた写真のフォームを見返すと恥ずかしくなります。
そして例にもれず順調なペースで周回していたと思いきや、転倒。
今回のダメージはなかなかに深刻で、シフトペダルのベアリングが完全に破壊されてしまいました。
元々度重なる転倒でシバかれていたこともあり、遂に今回の転倒で限界を迎えてしまった形です。
シフトペダルは予備部品を持参してなかったため、一瞬リタイヤという四文字が脳裏をよぎります。
ただ、ここで今回サポートに来てくれた監督の板金術が炸裂。
壊れたベアリングはそのままに、応急的にシフトペダルを固定し、コースに復帰出来ました。
後半スティントスタート
万全とは行かないものの、ライダーはオジーに交代し戦列に復帰。
完全に冷えてしまったタイヤと、応急修理したシフトペダルをいたわりながら走り始めます。
ペースを抑え、慎重に走行するオジー。
これまでの経験により、耐久レースらしい「フィニッシュラインにバイクを運ぶ走り」でした。
そして無事にスティントを走りきり、筆者にライダーは交代。
スティントの途中では、転倒した車両により赤旗中断などのアクシデントはありつつも、無事完走。
「グランツーリスモで見た景色だ!!!」とプリウスコーナーの途中で感動してしまい、盛大にオーバーランしたことは内緒です。
レースも残り45分となり、最終ライダーのホリウチに交代します。
絶望のピットイン
ラストスティントも安定したラップを重ねるホリウチ。
二回の転倒により順位は下位に沈んでいましたが、とにかくシリーズ全戦完走を目出して走ります。
このまま行けばとりあえず完走!と考えていたその時、なぜか自チームのマシンがピットに戻ってきました。
ルーティーンのピットではないので、トラブルが有ったことはすぐに分かりました。
ホリウチに話を聞くと「シフトペダルが無くなった…」と衝撃の一言。
ペダル付近に目を移すとそこにはシフトペダル、更にはシフトロッドの姿が見当たらず…。
シフトペダルの予備は無いので、ペダル周りをまるごとコース上に落としてきてしまったのでは修理のしようがありません。
交換部品が無いのではさすがにリタイヤだろうという判断になり、あきらめムードがチームに漂います。
レース運営の方にリタイヤを伝えようとしたその時、監督が妙案を思いつきます。
「3速ホールドで1周するぞ!!」
感動のフィナーレ
帰り支度を始めかけていた我々は、監督の一言でハッとします。
確かに3速ホールドでも発進さえできれば、シフトチェンジ無しで走りきれます。
大慌てでホリウチに再度ツナギを着せ、バイクを用意します。
レース残り時間は5分と少し。このコースは一周3分弱なので、今コースに戻ればチェッカーを受けられる計算です。
準備が整い、本当の意味でのラストスティントにホリウチを送り出します。
3速ホールドのため、発進を監督と筆者でアシスト。
「行って来い!!」と背中を叩き、バイクを押しながら走っている時には「耐久レースしてんなあ」としみじみ思ってしまいました。
最終的に3速のみで2周を走りきりフィニッシュ。スローダウンしながらもホリウチがゴールまでバイクを運んでくれました。
耐久らしさを凝縮したレース
結果として完走出来たので言える話ではありますが、耐久らしさが詰まったレースであり、個人的に求めていた「耐久レースを体験してみたい!」という目標は達成出来てしまいました。
こうなると次に狙うのは結果であり、「参戦することに意義がある」というステージの更に次の段階に進まなければならないのかと感じています。
次回はミニろく最終戦!第一期ヤングレーシングの集大成をお楽しみに!